第1回 解説編 セット販売の本当の力──数式を読み解く
著者:小竹竜也
掲載日:2026年2月1日
序論
前回の記事では数式を使って「なぜセット販売が外食産業における統合戦略なのか」を示しました。 今回はその数理モデルを、日常的な言葉と具体的なイメージに置き換えて解説します。
1. セット販売は「迷わない仕組み」
人は選択肢が多いほど「迷い」「時間」「後悔リスク」が増えます。 セットはその迷いをなくし、スムーズに決められるようにする仕組みです。 言い換えれば「決めやすさ」自体が価値となり、顧客満足度を高める要因になります。
たとえばランチで「ご飯+メイン+ドリンク」が一つにまとまっていると、数ある単品を組み合わせるよりも早く、安心して選べます。 これが数式で表現した「意思決定コストが下がる」ことの意味です。
2. 店舗の効率も上がる
セット販売はお客様だけでなく店舗にもメリットがあります。 調理や提供が標準化されるため、作業時間のばらつきが減り、忙しい時間帯でも流れが止まりにくくなります。
その結果、同じ人数でより多くのお客様に対応でき、人件費を抑えながら売上を増やすことができます。 これが数式で「人時売上高が上がる」と表現した部分です。
3. 値引きではなく「納得感」で勝負できる
セット販売というと「単品より少し安い」というイメージが強いですが、実は値引きだけが魅力ではありません。 大切なのは「組み合わせの相性の良さ」「お得感が分かりやすい価格設定」「スタッフのおすすめトーク」です。
たとえば「メイン料理にこのドリンクを合わせるとすっきりしておすすめです」と言われると、お客様は迷いなく選べ、満足感も高まります。 これが「値段以上の納得感」であり、粗利を守りながら売上を伸ばすポイントです。
4. 実務へのヒント
- ✓ セット内容は「相性」と「選びやすさ」で決める
- ✓ 価格は「比べやすさ」を意識して設計する(例:単品合計より〇〇円お得)
- ✓ 調理や提供の手順を標準化して効率を上げる
- ✓ スタッフ教育で「おすすめの言葉」を統一する
- ✓ 効果測定は「セット比率」「提供時間」「人時売上高」で行う
結論
セット販売は「お客様の迷いをなくす仕組み」であり「店舗の効率を上げる仕組み」でもあります。 値引き頼みではなく、設計・標準化・教育の工夫で大きな効果を発揮します。 次回の本論では「均衡モデル」として、顧客側と店舗側の両面を同時に考えた数理モデルを紹介します。 この解説編を踏まえて読むことで、より一層理解が深まるはずです。



