第4回 制度と思想の持続可能性──形式知と規範の役割

「思想の贈与論──文化資本と知の公共性」
著者:小竹竜也
連載開始:2025年9月7日
本書 連載第4回(掲載日:2025年10月5日)

思想は流通し、共有されるだけでは持続しない──制度として定着するとき、初めて未来に継承される。

要旨

本稿は、思想の贈与が文化資本として蓄積され、公共性で流通した後、それを持続可能な形で次世代に継承する仕組みを検討する。思想は自由なやりとりだけでは存続せず、制度や規範に組み込まれることで安定する。本稿では、形式知と暗黙知の相補性を論じ、制度が思想を形式知化する役割を考察する。同時に、制度化が硬直化を招くリスクを指摘し、制度と思想の弾力的関係を模索する。

キーワード

制度、思想の贈与、持続可能性、形式知、暗黙知、規範、継承、柔軟性

1. 序論:制度化の必要性

思想は公共性において共有されるが、それだけでは継承が不安定である。制度化することによって初めて思想は長期的に保存され、教育・文化・社会規範を通じて次世代に伝わる。

2. 形式知と暗黙知の相補性

制度は思想を形式知化し、共有可能にする。しかし形式知だけでは思想の厚みは失われる。ポランニーのいう暗黙知との結合によって初めて思想は実効性を持つ。制度は形式知の器であり、暗黙知がその中に息づくことで思想の豊かさが維持される。

3. 硬直化のリスクと柔軟な制度設計

制度は思想を保存するが、硬直化すれば思想を抑圧する。歴史的に多くの思想は、制度化の過程で形骸化し、理念から乖離してきた。したがって制度は柔軟である必要があり、更新可能な仕組みとして設計されねばならない。思想の贈与を継続的に可能とする制度とは、変化を内包する構造である。

4. 制度と思想の持続可能性の暫定命題

以上を踏まえ、次の命題を提示する。

命題1:思想は制度に形式知として保存されるとき、持続可能な文化資本となる。
命題2:思想を生かす制度は、硬直ではなく柔軟な更新性を内包する。

本書の第4回は、思想の贈与が持続するためには制度的基盤が不可欠であることを示し、次回以降の応用領域(評価制度・労務管理など実務的展開)への接続点を提示する。

関連ノード

  • THEORY:T5(実践知と制度の相互作用)
  • APPLIED:A3(労務管理における思想の制度化)
  • COMMONS:C2(知の共有とコモンズの管理)

参考文献(抜粋)

  • Polanyi, M. (1966). The Tacit Dimension. Routledge.(邦訳:『暗黙知の次元』ちくま学芸文庫)
  • North, D. (1990). Institutions, Institutional Change and Economic Performance. Cambridge University Press.
  • 小竹竜也(2025-)「思想の贈与論」連載各回