NNF連載|第6話 ふるまいを記述する──知の共有と文化化の出発点

NODE NAVISは、知を「内面の勘」や「経験者だけが持つ感覚」のままにはしておきません。
それを言葉にし、記録し、共有することで、組織の財産=文化的知識へと高めていきます。

そのための最初の一歩が、「ふるまいの記述」です。

ふるまいを記述することは、単なる日報ではありません。
それは──

・経験に意味を与える

・判断の背景を可視化する

・他者との対話の起点をつくる

そんな知の文化化の営みなのです。

なぜ、ふるまいを「記述」するのか?

多くの飲食現場では、「いいふるまい」は“見て覚えるもの”とされがちです。
しかし、見えるふるまいの背後には、感じ取った空気、関係性、判断の揺らぎなど、目に見えない要素が必ずあります。

NODE NAVISにおける記述とは、その見えない判断プロセスを言葉にして残す行為です。

記述には次のような価値があります。

・自分のふるまいを「意味づけ」する

・他人の判断を「参照」できる

・組織の価値観が「蓄積」される

・教育や振り返りの「素材」になる

つまり、ふるまいを記述することは、個人の実践を組織の知へと翻訳する作業なのです。

記述するのは「行動」ではなく「意味」

NODE NAVISで書くのは、「やったこと」そのものではありません。
大切なのは、そのふるまいがどのような文脈で、どんな意図で、何を生んだかという、ふるまいの“意味”です。

たとえば──

・「忙しいときに、お客様の水を注ぎ直した」
ではなく、

・「混雑していたが、お客様がグラスをゆっくり傾けていたことから、会話の区切りを感じ、水を注ぐタイミングを計った」

というように、気づき・判断・行動の背景を丁寧に記述することが、NODE NAVISの本質です。

記述テンプレートの例(基本型)

以下はNODE NAVISにおけるふるまい記述の基本フォーマットです。
※これは一例であり、店舗に応じて柔軟に運用して構いません。

【ふるまい記述テンプレート】

  • 状況(いつ・どこで・誰が)
     例:日曜ランチタイム、ホールスタッフの新人Sさんが…
  • 接続(誰と誰が・どのような関係で)
     例:初来店の4人家族との接客、父親がやや緊張している様子
  • ふるまい(何を・どのようにしたか)
     例:オーダーをとる際、軽く微笑みながら視線を少し下げ、声のトーンを抑えた
  • 意図(なぜそのふるまいを選んだのか)
     例:お客様の「周囲に気を使っている」気配に合わせ、空気を和らげたかった
  • 結果(どうなったか・反応はどうだったか)
     例:父親がふっと笑顔になり、家族全員がリラックスした様子になった
  • 学び・応用(何を学び、どこに活かせるか)
     例:声のトーンや目線の位置も、安心感につながることがある。新人研修で共有したい

記述は“教える”ためではなく“対話”のためにある

NODE NAVISにおける記述は、上から下への指示や評価のためのものではありません。
それは、横の関係で学び合い、照らし合うための媒介です。

書き手は「教える人」ではなく「語る人」。
読み手は「学ぶ人」ではなく「照らす人」。

この対等な接続構造があるからこそ、NODE NAVISはヒエラルキーではなくノード型の学習文化を実現します。

次回予告:ふるまい同士を“つなぐ”

次回は、記述されたふるまい同士をどのようにつなぎ、意味のネットワーク=知の構造を築いていくのかを扱います。
それは、記述された行為を「点」で終わらせず、「線」として関係づけていくことで、文化的なパターン=知の回路が生まれるという視点です。(2025/7/13 小竹)