「天の時は地の利に如かず、地の利は人の和に如かず」と孟子は述べています。これを読むと、最も重要なのは人の和、つまり組織の一体感と説かれています。しかし、いくら一体感があっても、地の利がなければ意味がない。そして、地の利があっても、天の時、つまりタイミングや運が必要となります。これが、リーダーシップを発揮する上での条件なのです。

ここで、マズローの欲求の5段階を考慮すると、リーダーシップの本質がより明確になります。人は基本的な生理的欲求から自己実現の欲求へと昇華していきますが、リーダーとして他者を導く際には、承認の欲求や自己実現の欲求が大きく関与します。組織においてリーダーシップを発揮する者は、部下やメンバーのこれらの欲求を理解し、それを満たす環境を提供する役割が求められるのです。

歴史的に見れば、三国志の英雄では「治世の能臣、乱世の奸雄」と言われた曹操の成功は、適切なタイミングと環境の理解、そして彼の部下たちの欲求を的確に捉えるリーダーシップに起因すると言えるでしょう。

人は誰でも一定の運命を持って生まれてきますが、その中でどれだけ他者の心理的欲求を理解し、リーダーシップを発揮できるかが問われるのです。（2023/10/1 小竹）