学びと仕事①

人の知性は、一つの年齢で頂点を迎えるものではありません。情報をすばやく処理する力は若い時期に高まりやすく、短期記憶にも若年期から成人初期にかけての伸びがあります。一方で、相手の感情を読み取る力、経験をもとに判断する力、言葉や知識を蓄積して使いこなす力は、年齢を重ねるなかで深まっていきます。

若い頃に学ぶことは、たしかに大切です。基礎となる知識、考える習慣、努力する姿勢は、その後の人生における大きな財産になります。しかし、知性とは若さだけに宿るものではありません。仕事に向き合い、経験し、悩み、考え、判断を重ねることで、人は年齢とともに別の知性を育てていきます。

本稿でいう知性とは、単なる記憶力や処理速度ではなく、フロネシス、すなわち実践知に近いものです。それは、いま与えられている仕事と結びつき、現実のなかで試されることによって進化していきます。学びは、仕事から離れたところにあるのではありません。日々の仕事のなかでこそ、知は磨かれ、深まり、自分のものになっていくのです。

(2020/9/14)


執筆者 小竹 竜也(Tatsuya Kotake)
株式会社フーズサポートモリカ 本部長。
日々の実務から問いを立て、理論と現実をつなぐことをテーマに執筆している。

著書『徳とは、時を流す力である』を2026年6月、Amazon にて発刊。

SSRN掲載論文・研究活動はこちら