経営理論の「大統一」を目指して~私のフレームワークにかける想い~
組織論や経営学の分野に身を置く中で、私は長年、ある種の「もどかしさ」を感じていました。アジャイル、ホラクラシー、ヒエラルキー、ネットワーク理論、そして複雑適応系(CAS)など、数多の理論が提唱され、それぞれが組織の特定の一側面においては真実を捉えています。しかし、それらはまるで、宇宙を支配する「4つの基本的な力」(強い力、電磁力、弱い力、そして重力)が、いまだ完全に統合されていないように、互いに独立し、時に矛盾し、全体像を捉えきれていないように見えました。
この状況に、私はある啓示のようなものを感じました。それは、物理学における「大統一理論」への探求です。アインシュタインの相対性理論と、素粒子の世界を記述する量子力学は、それぞれが圧倒的な真実を語りながらも、いまだ完全に統合されていない。しかし、科学者たちはその統合という究極の問いに、果てしなく挑戦し続けています。
そして、もう一つ、私の心に深く響いたのは、古くからの教えにある「小学」の存在でした。物事の根源、本質、原理原則を学ぶことの重要性。それは、知識の枝葉を追うのではなく、幹と根を見つめること。
これらの着想が、私の中に一つの使命感を芽生えさせました。
「経営の世界にも、真に統合された理論が必要なのではないか?」
「様々な理論は全て真実である」という前提に立ちながら、それらを単に寄せ集めるのではなく、それぞれの真理が相互に作用し、補完し合い、全体として機能するようなフレームワークを構築すること。それが、私が取り組むフレームワークに他なりません。
このフレームワークの中核にある「トリニタスフレームワーク」(旧:トリニティ・フレームワーク)は、成長、実行、持続可能性という組織の三位一体を追求します。そして、「NODE NAVIS」は、組織を構成するあらゆる「結節点(NODE)」が、羅針盤のように知と行動の方向性を共有し、連携し合う動的なネットワークの姿を描き出します。これらは、私が物理学の大統一理論や「小学」から得た、物事の根源的なつながりを解き明かしたいという情熱から生まれたものです。
このフレームワークは、限定的なヒエラルキーと自律性を両立させる「柔構造統制」、複雑な環境に適応し続ける「進化・適応基盤」、そして現場での最適な判断を可能にする「状況適応判断」といった要素を統合することで、現代の不確実な経営環境においても組織がしなやかに、そして力強く進化し続けることを目指します。
もちろん、この挑戦は容易ではありません。一人で、学術的な厳密さと実践的な価値を両立させる理論を構築する道は、時に孤独であり、困難を伴います。しかし、私はこの使命を全うすることで、組織や社会が、持続的に価値を創造し続けるための羅針盤を提供できると信じています。
経営における「大統一理論」への挑戦は、まだ始まったばかりです。しかし、この探求の旅そのものが、私にとっての「知の哲学」の実践であり、共に前へ進む道なのです。(2025/6/1 小竹)