第2回 残業とは何か
時間を延ばすことではなく、働き方の状態を映すもの
この記事は、労務管理をテーマにしたシリーズの第2回です。
残業とは、時間が延びたという事実ではありません。
その日の営業状態、人員配置、準備、判断、引き継ぎ、そして店舗の管理のあり方が、表に出たものです。
制度上、労働時間には1日8時間・1週40時間の基準があり、それを超える時間外労働には適切な管理が必要です。しかし、会社運営の視点で見ると、残業は単なる「時間の超過」ではありません。
忙しかったから残業になった。
人が足りなかったから残業になった。
仕込みが終わらなかったから残業になった。
片付けが長引いたから残業になった。
これらはすべて、単なる結果ではなく、店舗の状態を示す情報です。
残業が起きたとき、何を見るか
残業が発生したときに大切なのは、「誰が何分残ったか」だけを見ることではありません。
なぜ残る必要があったのか。
事前に防げることはなかったのか。
業務の組み方に無理はなかったのか。
特定の人に負担が偏っていないか。
その残業は、お客様の満足につながるものだったのか。
ここまで見て、初めて残業は労務管理上の意味を持ちます。
残業は、絶対に悪いものではありません。飲食店の現場では、予想を超える来店、急な欠員、予約対応、トラブル対応など、予定通りにいかないことがあります。そのようなときに、必要な対応をすることはあります。
残業そのものより、「なんとなく」が問題
問題なのは、残業そのものではなく、残業が「なんとなく」発生することです。
なんとなく残る。
言われていないが残っておく。
忙しそうだから帰りにくい。
店長が把握しないまま時間だけが延びる。
この状態になると、会社は正しい判断ができなくなります。人件費も見えにくくなり、本人の疲労も蓄積し、業務改善の機会も失われます。
だからこそ、残業には申請や報告が必要になります。
申請や報告は、働く人を縛るためのものではありません。
「なぜその時間が必要だったのか」を明らかにするためのものです。
残業を申請するということは、単に許可を取ることではありません。
その日の営業状態を会社に伝えることです。
残業管理は、店長の営業管理でもある
店長にとっても、残業管理は単なる勤怠確認ではありません。
残業が出たという事実から、営業の組み方、人員配置、教育状況、作業分担を見直す必要があります。
たとえば、毎回同じ人だけが残っているなら、仕事の偏りがあるかもしれません。
閉店作業がいつも長引くなら、作業手順や役割分担に改善点があるかもしれません。
忙しい日に残業が多いなら、シフトの組み方や事前準備に課題があるかもしれません。
つまり、残業は「頑張った証拠」ではなく、「店舗の状態を映す鏡」です。
個人の頑張りを、組織の改善へ
もちろん、頑張りそのものを否定するわけではありません。急な状況に対応してくれる人の存在は、店舗にとって大切です。しかし、その頑張りに頼り続けるだけでは、組織はよくなりません。
大切なのは、個人の頑張りを、会社の改善につなげることです。
残業が発生した。
では、なぜ発生したのか。
次に同じ状況が起きたとき、どうすればよいのか。
誰か一人に負担が偏らない形にできないか。
お客様への対応を保ちなら、働く人の無理を減らせないか。
このように考えることが、労務管理です。
労務管理とは、ルールを守らせることだけではありません。
働く時間を正しく見て、働き方を整えることです。
残業を正しく管理することは、会社を守るためだけではありません。働く人を守り、店舗の状態を見えるようにし、よりよい営業をつくるための基本です。
残業を時間の問題だけで終わらせてはいけません。
残業は、店舗運営の構造を見直すための入口です。
時間を延ばすことではなく、働き方の状態を映すもの。
それが、残業を理解する第一歩です。(2026年6月28日)
執筆者 小竹 竜也
株式会社フーズサポートモリカ 本部長。
日々の実務から問いを立て、理論と現実をつなぐことをテーマに執筆している。



