知を贈るという選択──小さな企業の、大きな誇り
私たちは、企業として積み重ねてきた理論や知見を、特定の相手に売ることもなく、登録制でもなく、無償で公開しています。
誰かに求められたわけではなく、ビジネスとして収益が生まれるわけでもありません。それでも私は、この営みを“誇り”だと感じています。
規模ではなく、社会に贈るものこそが企業の価値
私たちの会社は、決して大きな企業ではありません。組織規模で言えば、零細企業と呼ばれる部類に入るでしょう。ですが、私は心の底から信じているのです。企業の価値は、規模ではなく、何を社会に贈ろうとしているかで決まるのだと。
たとえば、知の羅針盤である「NODE NAVIS」。実践理論の「トリニタス・フレームワーク」。「知と徳の経営哲学」「価値観という鏡」といった連載――それらはすべて、時間をかけて編みあげた思索と実践の成果です。もし販売していたら、それを手に取る人は限られていたかもしれません。
でも私は、それを誰かの問いに寄り添うものとして、開いておきたいと願いました。「これは、こういう考え方もあるんだ」と静かに受け取ってくれる人がいるかもしれない。そう思えるだけで、公開する意味があると思えたのです。
「知を贈る」という、私たちの“ふるまい”
誰かに響くかわからない言葉を、わざわざ丁寧に書くことは、効率や成果だけを考えると、遠回りに見えるかもしれません。けれど、私にとっては、それが企業としての“ふるまい”のかたちなのです。
NODE NAVISが大切にするのは、「問い」「ふるまい」「関係」。知は一人で完結するものではなく、関係のなかに育つもの。だからこそ、知を贈るという行為そのものが、私たちにとっての企業活動なのだと思います。
未来の読者たちへの願い
私はひとりで書いています。組織として動員をかけているわけではありません。ですが、理念に共鳴してくださる方々、スタッフたち、そして何より、まだ見ぬ未来の読者たちの存在を信じています。
今すぐ必要とされなくてもいい。だけど、必要になったとき、静かにそこにあってほしい。そんな願いを込めて、今日も知を贈ります。
見返りを求めない「贈与」の精神
知を贈るという選択。それは、見返りを求めないわけではなく、「人間とは、贈与によって育つ存在だ」と信じているからこその選択です。 私たちは、小さな企業かもしれません。けれど、「一隅を照らす、これ即ち国宝なり」の言葉を胸に、これからも、自分たちの知とふるまいを、社会に開いていきたいと思っています。(2025/6/15 小竹)