トインビーに学ぶ「挑戦と応戦」の連鎖──地域に根ざす私たちの物語
「歴史は挑戦と応戦の連鎖から成り立っている」。
アーノルド・トインビーのこの言葉は、古代文明の盛衰を語るだけのものではありません。私たちが営む飲食店という、ごく日常の舞台にも、まるで水脈のように、その真理が静かに、しかし確かに息づいているのです。
私たちはフランチャイズ加盟店として、日々の営業を積み重ねています。決められたメニュー、価格、オペレーションの枠組み。それは一見すると、創造性を縛る「制約」に思えるかもしれません。しかし、この「制約」こそが、私たちに与えられた「挑戦」なのです。
この限られた中で、どうすればお客様の記憶に残る、唯一無二の店となれるのか。どうすれば「ここに来るとホッとする」「また来たい」と思っていただける店づくりができるのか。私たちは日々、この問いに真剣に向き合っています。
応戦は、決して派手な英雄譚ではありません。それは、日々の小さな気づきと、誠実な行動が織りなす、ささやかな、しかし確かな積み重ねです。
ある日、スタッフが「最近は常連のお客様が来店されるたびに、名前を覚えて呼ぶようにしています」と話してくれました。最初は少し照れながらも、お客様の笑顔を見て、やってよかったと感じたそうです。そんな一言の積み重ねが、お客様に「ここは自分の居場所」と思っていただける雰囲気をつくり出しています。
そして、私たちにはもう一つ、大切にしている想いがあります。
それは、この店が「安心できる場所」でありたいということです。
「初めてアルバイトをするなら、あのお店がいいよ」と親御さんに勧めてくださるような、そんな職場を目指しています。礼儀や常識を学び、社会に出る前の予行演習となる場所。働くことで自信をつけ、将来の夢に向かうきっかけをつかめる場であること。そんな店であれたら、地域にとっても、かけがえのない存在になれると信じています。
実際に、ここでアルバイトを始めた一人の学生がいました。最初は接客に自信が持てず、うつむきがちでしたが、周りのスタッフの温かいサポートと、お客様からの「ありがとう」の言葉に背中を押され、次第に笑顔で接客できるようになりました。卒業後には、「ここでの経験が自信になりました」と胸を張って巣立っていきました。その姿に、私たちもまた励まされ、次の挑戦に立ち向かう勇気をもらいました。
挑戦は避けられません。しかし、どのように応戦するかは私たち次第です。制約の中でも、工夫や誠実さ、人とのつながりを大切にすることで、自分たちなりの価値を築くことができます。
トインビーの言葉に耳を傾けながら、これからも一歩ずつ挑戦に応戦し、店舗の歴史を刻み、会社の物語を紡ぎ、地域と共に歩み続けていきたいと思います。
そしてこの物語は、私たちだけのものではなく、それぞれの持ち場で挑戦に応戦するすべての人の物語へと、きっと繋がっていくと信じています。(2025/6/1 小竹)